年次決算とは? 必要書類もチェックリストで紹介

年に1度の決算の際、経理部は業務が多くて大変です。

決算業務を行う上で、

「きちんと漏れなく決算手続きが行えているか不安」

「決算手続きの負担が大きく、効率的な方法はないか」

このような悩みを抱えている方も多いでしょう。

そんな不安を解消するために、本記事では、年次決算に必要な書類一覧や年次決算の効率化のコツをご紹介します。

年次決算とは? 必要性と月次決算との違いも解説

年次決算はすべての会社の義務

年次決算とは、企業が年に1回決算書をまとめる作業のことです。決算書とは、損益計算書や貸借対照表等の財務諸表を含む書類のことです。

自社の経営状況をまとめることで見えてきた課題を、今後の経営に活かせます。

法律上でも法人税法によって、「年度末の翌日から2か月以内」に前年度の税金を納めることが義務となっています。そのため、年次決算はすべての会社の義務と言えるでしょう。

年次決算が会社にとって必要な理由

企業の成長には、年次決算で自社の財政状況を把握することが必須です。次年度の経営戦略を練る際は、前年度の決算書からどの分野がうまくいかなかったのかや、逆にどの分野が成長しているのかを確認することからはじまります。

場合によっては、追加の融資がないとキャッシュ・フローが回らなくなる危険性もあります。前項で説明した通り、年次決算は義務であるのと同時に、今後の企業の方向性を決めるための重要な資料となるため、年次決算は会社にとって必要です。

年次決算と月次決算との違いとは?

1年に1度行われるのが年次決算です。それに対し、毎月末に行われる決算を月次決算と言います。月次決算も、年次決算と同じように財務諸表を作成して財政状態を確認するために行われます。

同じ目的で行われる年次決算と月次決算ですが、一番大きな違いは法律上で実施の義務があるかないかです。月次決算は法律で定められていないため、完全に企業の任意で実施されます。

任意の実施にはなりますが、月次決算を行うことで年次決算の負担を減らせるため、多くの企業で導入されています。

年次決算から法人税申告までのスケジュール

日本の場合だと多くの企業が4月1日から3月31日を1事業年度としているため、3月31日以降に年次決算が行われます。法人税法によって「年度末の翌日から2か月以内」に前年の税金を納めるように義務化されているため経理担当者にとっては非常にハードなスケジュールです。

年次決算から法人税申告までのスケジュールは以下のようになります。

  1. 決算に必要な情報を整理
  2. 決算書をまとめる
  3. 納める税金の額を計算
  4. 法人税申告

時間がないからこそ、処理の流れをきちんと押さえることが重要です。

年度末にならないとできないような作業や仕訳もありますが、月次決算等の事前にできる準備もあるので余裕をもって年次決算を迎えられるようにしましょう。

年次決算の業務内容を詳しくチェックしよう

棚卸により在庫の把握を行う

棚卸とは、商品の在庫をひとつずつ確認する作業のことです。

在庫として残る商品は、棚卸資産として翌年に引き継ぐ必要があります。売れ残った商品に対して、売れた商品は売上原価として計上します。棚卸も月次で行っておくと、年次決算の際の業務負担が減るのでおすすめです。

未処理の勘定がないか決算を整理する

未処理の勘定がないか決算を整理する際、まず確認するのが現金と預金の残高です。

よくある例として、取引先から売掛金の回収があったのに未処理であったり、現金で支払った費用の処理を忘れていたりが考えられます。帳簿上の数字と残高の数字が一致するまで何度も確認しましょう。

ほかにも、固定資産の減価償却処理や会計期間に対応していない分を未払・未収入金とする処理や貸倒引当金等の引当金の処理を行います。未処理の勘定がないように、細かいところまできちんと確認しましょう。

決算書を作成する

決算書の主たる書類は損益計算書と貸借対照表です。決算書に必要な書類は後ほど詳しく紹介します。

棚卸や決算整理事項の処理を行った情報は、損益計算書と貸借対照表に集約されます。企業がどれだけ売上げているかや、利益を出しているか等の経営状況を決算書で確認できます。

税金の計算を行う

決算書の作成の後に、税金の計算を行います。企業が納める税金は、法人税と消費税、法人住民税、法人事業税です。

特に法人税は「税引前当期純利益」の額によって算出されるため、決算書の後にしか計算できません。消費税においては「仮受消費税」と「仮払消費税」を相殺した額を納付します。

税務申告を行い、納税する

計算した税金の額は、確定申告書という国税庁が発行するフォームに記入します。法人税法上で定められた「年度末の翌日から2か月以内」に確定申告をしなくてはいけません。例外として、条件を満たした上場企業であれば、1か月の延長が認められる場合があります。

また、消費税は「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2つがあり、それぞれフォームが異なります。自社がどちらの方式を採用しているか事前に確認しておきましょう。

株主総会を開く

ほとんどの株式会社では、決算日の3か月以内に株主総会を招集することが一般的です。企業は投資している株主に対して、会社の現状を伝える義務があります。また、決算書をもとに配当金の分配等が株主総会で議論されます。

年次決算・納税に必要な書類は?チェックリストで紹介

年次決算に必要な書類リスト

年次決算に必要な書類は以下の7つです。この章では、それぞれの書類について詳しく確認していきます。

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書
  3. 株主資本等変動計算書
  4. キャッシュ・フロー計算書
  5. 付属明細書
  6. 個別注記表
  7. 事業報告書

□貸借対照表

貸借対照表とは、あるタイミングにおいての企業の「資産」「負債」「純資産」のそれぞれの状況を表します。年次決算の場合は決算時の財務状況を把握できます。

貸借対照表を確認することによって追加で借入れが必要かどうかもわかります。

□損益計算書

損益計算書とは、一定期間の企業の「収益」「費用」「利益」の状況を表す書類です。年次決算の場合は、事業年度開始から決算月までの1年間の企業の経営状況を把握することができます。

今後の経営のためにどの分野でコスト削減が可能か、どの分野で成長が見込めるか等、次年度の経営戦略の立案にも役立ちます。

□株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の「純資産」の部分を切り取った書類です。

貸借対照表よりも詳しく、株主資本による純資産か、株主資本以外の純資産か等を確認できます。なぜ純資産の増減があったかを分析するために用いられます。

□キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書とは、期首の現預金残高から、期末にいくら残っているかのお金の流れを把握するために作成されます。

例えば、手元の現預金が少ない場合には売掛金の回収を急いだり、追加で借入れをしたりと、キャッシュ・フロー計算書の情報から対策を練れます。

□附属明細書

付属明細書とは、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表の重要な項目について、より掘り下げた明細を記した書類です。付属明細書には、固定資産や引当金、販売費および一般管理費の明細を記します。

財務諸表に細かい内訳を記載すると必要な情報が読み取りづらくなるため、付属明細書を作成します。こうすることで、読み手は深く詳細を知りたいことだけを確認できるようになります。

□個別注記表

個別注記表とは、決算書の読み手に対しての注記をまとめた書類です。具体的には会計方針の注記や各財務諸表を読む際の注記を記します。今までは、各財務諸表に直接注記されていましたが、会社法によって新たに決算書のひとつとなりました。

□事業報告書

事業報告書とは、財務状況だけでなく現在の事業の概要や進捗をまとめた書類です。事業報告書は株主総会で株主にも提供され、外部の方に企業の経営状態を知ってもらうために役立ちます。

財務諸表を読み解けない方にもわかりやすく現在の会社の状況を伝えることが重要です。

納税に必要な書類リスト

納税の際に必要な書類は以下の3つです。それぞれ詳しく確認していきましょう。

  • 確定申告書
  • 国税申告書
  • 地方税申告書

□確定申告書

確定申告書は法人税を計算するための書類です。決算日の翌日から2か月以内に、勘定科目内訳書や決算報告書等の書類と一緒に税務署に提出します。

法人税法によって義務付けられているので遅れないように余裕をもって申告しましょう。

□国税申告書

消費税申告書は、基本的には2期前の売上高が1,000万円を超えた企業に納税の義務が発生します。とはいえ、すべての企業が申告しないといけない訳ではありません。また、1,000万円は利益ではなく売上なので、たとえ赤字であっても納税の義務が発生します。

□地方税申告書

法人が納める地方税には「法人住民税」と「法人事業税」があります。

法人住民税は「道府県民税」と「市町村民税」が含まれ、事業所の地域によって異なります。

法人事業税は、その年の事業年度の利益によって計算されます。そのため、赤字の場合は法人事業税の納税の義務はありません。

どちらも地方の行政府に納める税金になるので覚えておきましょう。

年次決算をスムーズに行うためにチェックすべき注意点

月次決算や日次決算を行い企業状況を把握しておく 

月次決算、日次決算のメリット

年次決算をスムーズに行うために準備できることのひとつが、月次決算や日次決算です。これらは法律で作成は義務化されていませんが任意で作成することが多いです。

これらを作成していれば年次決算の際には、今までの決算の再確認と前月または前日の決算処理を行うだけで済みます。作成する決算書は貸借対照表と損益計算だけです。

短いスパンでの決算は、年次決算をスムーズにするだけではなく、日々の会社の状況を把握できるため素早い意思決定や業務改善に役立ちます。よりリアルタイムで会社の状況を把握するには、日次決算のように短いスパンで決算するのがおすすめです。

日次決算導入企業とその効果

日次決算は、多くの企業で導入が進んでいます。導入の背景には以下のようなメリットがあります。

  • 意思決定のスピードアップ
  • ミクロ視点でのマネジメントが可能になる
  • 経営者意識の醸成

年次決算や月次決算では、決算を行うまでの間は課題があっても改善策を考えるまでのタイムラグが発生します。これに対して、日次決算の場合は日々のデータを確認してすぐに改善策を練ることが可能です。また、毎日情報を積み重ねることで情報の精度が上がります。

日次決算を導入した企業では、財務諸表をもとにした考え方が身についたことにより、従業員が経営者意識を持ちはじめた事例もあります。このように様々なメリットがある日次決算は多くの企業で導入されています。

経理業務を効率化する会計ソフト/システムを導入する

日次決算が大切なことはわかりましたが、ほかの業務も忙しい中で毎日決算整理をするのは大変な作業です。そのような際には会計ソフトやシステムの導入を検討してみましょう。

例えば、oneplatというサービスを導入すると、日次決算をパソコン上で行えるため作業を効率化できます。そのほかにも、経理業務の電子化を進めることで作業の効率を大幅にあげられます。

特に経理の人材が少ない企業は導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

本記事では、年次決算に必要な書類一覧や年次決算の効率化のコツをご紹介しました。必要書類のチェックリストを作っておけば、決算の際に余裕を持って臨むことができます。また、より短いスパンでの月次決算や日次決算を取り入れることで年次決算の負担軽減に繋がります。

負担増に感じられる日次決算は、電子化やシステム導入をすることで自動化することが可能です。この機会に経理業務の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

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